日本水中科学協会Japanese Academy of Underwater Sciences

スクーバダイビング活動基準 解説


水中活動基準(2011);解説

   特定非営利活動法人日本水中科学協会 代表理事 須賀次郎、     

はじめに

JAUSでは、発足のひとつの目標が、活動基準の策定でしたから、およそ1年間かけて基準をつくりました。 http://jaus.jp/ にプロトタイプ基準として発表されています。プロトタイプも、基準とマニュアルを分離したコンセプトで作られていますが、それでも、分野、地域、目標、組織の形態などによって、それぞれ定められるマニュアルの領域に踏み込みすぎて居ます。

再度、基準、細則、マニュアルの別を分けて、くみ立て直しました。

この解説では、中心になる基準とその周辺の技術と問題点を述べて、マニュアル研究の方向を示そうと試みました。

 

1.       総則

 

1−1 「日本水中科学協会の活動基準は、会員が互いの安全のために守る約束である。」

       不特定多数の人に基準(約束)を守ってもらうためには、国が定める法律と法律に準拠した規則が必要である。

日本水中科学協会の基準は会員の範囲で守る約束であり、不特定多数を対象としたものではない。。

 

1−2 「基準各主題について、実施にあたって、必要があれば細則が定められる。基準と細則に従って、各分野、実施する地域、の状況、海況などに応じた計画、マニュアル(実施方法・手順)を決めてダイビング活動を実施する。」

  1−2−1 細則は、左のように三連の表記で示される。

 

バディシステムを例にとると、

3−5「活動に際しては、二人のダイバーが緊密に連携して活動する、最も重要な約束(ルール)であり、これをバディシステムと呼ぶ。」が、基準であり、基準を守るために、編成はどうするか、その中での役割分担をどうするか、ダイビング前のブリーフィングとか、その時の手順をどうするか、もし見失った場合にどうするのか、レスキューはどうする、などなどが細則になる。

 

 

☆マニュアルとは

最近発表されようとしている沖縄県ダイビング安全対策行動指針は、沖縄県のダイビングショップがどのようにサービスをするべきかのサービスマニュアルであり、ローカルルールとも言える。発表される学習院大学の活動マニュアルは、活動全体をコントロールするマニュアルである。サイエンス・ダイビングで、訓練生をチームに入れて、マークラインとゴムボートを使った安全度を高めるマニュアル、これらは行動マニュアルである。

  プライマリープログラムは、トレーニングマニュアルである。

     龍泉洞のダイビングは、特異性の強い、その場、その目標を安全に達成させるためのマニュアルである。

これらのマニュアルが、基準と細則と照合して整合性を満たしているかを見てゆく。また逆に、有用なマニュアルがあり、それが細則と合わないようなことがあれば、安全度を検討して、細則の方を改訂して行く場合も考えられる。

 

1−3会員が実施している、あるいは実施しようとしているマニュアル、ローカルルールールは、成文化されたものであれば、基準に合致するか否かを検討し、危機管理に耐えうるものであれば採用する。」

 1−3−1 既製のマニュアルが基準と合致しない場合には、改正を要求する。

1−3−2 「基準は固定したものではなく、マニュアルからのボトムアップ、研究会の成果、アクシデント例などによって改訂され、毎年度新しいものが発表される。

1−4「基準・細則の改訂は、各研究会、実行委員会において提示され、検討し、理事会が定める。」

1−5「JAUSでは、各分野ごとの公式マニュアルを参考資料として作成する。」

 

メンバーそれぞれが、自分のダイビングで使っているようなマニュアル、それは、経験の文章化、ノウハウの文章化したものであるかもしれないが、それらを研究して、最大公約数をまとめて、公式マニュアルにまとめてゆく。

 

2.       責任と判断

 

2−1「JAUS会員は、水中活動において、自分の責任で自分を守り、バディ、およびチームのダイバーの安全について、出来るだけの努力をする。」

 

厳しい自然の中に身を置いて、対決する活動は、登山、水中活動、ヨットなど小さいボートによる航海、科学的な目標を追求する探検、未知の領域の探査、いずれも命を落とす可能性がある。それらの活動のうちで、ダイビングは、自分の意志で危険をコントロールできる部分が大きい。それだけに、真剣に、真摯に自然を受け止めて、自分の責任と判断で行動することによって、安全性を高めることができる。

JAUS会員でなくても自分の責任で自分を守ることは当然であるはずだが、水中という厳しい環境では、助け合わなければ生きることができない状況が多々起こる。一方、遊びにせよ仕事にせよ、スクーバの本質は自立である。その二律背反も自力で、自分の責任で解決しなければならない。ある程度の知識・技能を持たなければできることではない。

 

2−2「自己責任は、強制されるべきものではなく、自分の責任で採択するものである。」

技能を確認せずに自己責任を強制すれば、殺人に等しいかもしれない。強制はできない。インストラクターは、自己責任を認めないダイバーの安全管理を行うわけだから、その責任は重大である。

 

3.水中活動の分野

 

3−1 「本基準でいう水中活動とは、スクーバ、あるいはスキンダイビングで、目的、目標を持って、海あるいは陸水の水中で行う活動であり、日本水中科学協会では、これをスポーツ、サイエンス、プロフェッショナルの三つの分野に分ける。」

 

3−2 スポーツ・ダイビング

 「スポーツとして行われる水中活動であり、サイエンス、プロフェッショナル以外のすべてが含まれる。」

 

 ☆スポーツとは

ウィキペディアによれば、「スポーツ: sport)は、人間が考案した施設や技術、ルールに則って営まれる、遊戯競争・肉体鍛錬の要素を含む身体を使った行為であり、競技として勝敗や記録を主な目的として行う場合はチャンピオンスポーツ、遊戯的な要素を持つ場合(楽しむ事や体を動かす事を主の目的として行う場合)はレクリエーションスポーツと呼ぶこともある。

 

 スポーツの概念と役割 田川豪太 によれば、

1968年の国際スポーツ・体育評議会(ICSPE)による定義
 「スポーツとは、〈プレイの性格を持ち、自己または他人との競争、あるいは自然の障害との対決を含む運動〉である(1)」

この定義を採用すれば、探検的なエキスペディション・ダイビングもスポーツに含めることができる。登山などもここに位置する。

 

3−2−1  スポーツダイビングの内容による分類

 @レジャー&レクリエーション

 Aスポーツ

 Bエキスペディション

 C目標を持つスポーツダイビング

 

1.レジャー&レクリエーション

 特に目標を定めない、楽しみのためのダイビング。

 2.スポーツ

 人格の育成、トレーニングによる心身の発育を目指す。

3.エキスペディション

a,  サイエンティフィックな探検もスポーツダイバーと協同・協力して行うことができる。

b.  探検的要素のあるスポーツダイビングとして学生クラブの遠征、洞窟潜水、沈船ダイビングなどがある。

c   テレビのドキュメンタリー番組は、ほとんどすべてエキスペディション である。

4.目標を持つスポーツダイビング

a 水中撮影(プロを除く)

セルフ・ダイビングを行う可能性が高い。

  b  環境保全活動

スポーツダイバーの環境保全活動も盛んにおこなわれるようになったが、一般に、自己責任は確立していない。

 

3−3 サイエンス・ダイビング

「サイエンス・ダイビングとは、研究機関、リサーチ機関、教育機関などの研究者および従事者が、科学的な調査作業を行うための水中活動であり、科学の進歩のために行われるものである。」

 これは、AAUSの定義である。JAUSでも、この定義をサイエンス・ダイビングの定義として採用する。

 

水中科学協会という名前を採用した理由

上記の狭い定義をまずサイエンス・ダイビングと呼ぶが、スポーツダイビングもプロフェショナルダイビングもそのものが科学である。

近年は、スポーツは人間科学とよばれることが通常になっている。ダイビングも水中で活動する人間の科学に他ならない。

当初、水中活動を三つの分野に分けて、それぞれが全く別の活動だと考えていた。

プロトタイプ基準では、三つの分野、それぞれ別の認定資格を設定している。しかし、目的、目標の違い、心構え、準備の違いなどは、それぞれ大きく隔たる部分もあるが、その基本である、ダイビングに直接関連する知識、技能、心理状態などには、違いはほとんどない。

  

基本部分は同じてあるとして、それぞれの分野の特性、問題点を見てゆく。

サイエンス・ダイビングでは、研究者がダイビングを軽視していたことが、事故に繋がっていた事例がある。

研究者に軽視されないように、研究者にダイビングの基本を理解してもらい、水中活動を研究者を巻き込んだ文化にして行きたい。

 

各分野の技能水準を比較して見ると、プロが一番高いのは当然として、サイエンス・ダイバーが最も低い。技能の高低は、ダイビングを行う日数の多少に比例しているわけで、サイエンス・ダイバーが最も経験日数が少なく、かつ、全くトレーニングをしない。

 

サイエンス・ダイビングとスポーツ・ダイビング

スポーツダイバーが、プロの研究者と共通の資格・基準を持って一緒に潜水することで、プロの研究者とチームを作ることができ、サイエンス・ダイビングの安全性が向上するとともに、スポーツダイバーの生涯学習になる。

 研究者である学生ダイバーは、保護管理が必須であり、そのためのプログラムをこのシンポジウムでも発表する。 

 

サイエンス・ダイビングの研究課題

 研究者である学生ダイバー(修士課程、博士課程)は、Cカードをとったばかりのレジャーダイバーと同じである。一方、水中での研究活動を専らにして、10年以上の経験があるサイエンス・ダイバーは、自己流でありながら、プロダイバーに近い実力を持っている。この組み合わせのバディは、危険度が高い。  

研究機関や大学では、釣り合いのとれた、良いバディシステムで潜ることがなかなか出来ない。実力の低い学生と潜るか、プロのダイバーをガイドに雇う他ない。どうしてもソロか、ソロに近い、バディが離ればなれになるダイビングになってしまう。

ベテラン研究者ダイバーのソロ・ダイビングの安全確保の方策の研究が課題である。

須賀が売りだそうとしていた、中性浮力の通話ケーブルを命綱にしたケーブルダイビングシステムを再検討する。

 

☆スキンダイビングとサイエンス・ダイビング

スキンダイビングは、スクーバダイビングの基本であり、トレーニングとしてまたスポーツとして行われて、今後はますます盛んに行われるべきである。

 最近、篠宮龍三君が100mを越える記録をだすようになり、水深30m付近までは、スキンダイビングで潜ることが出来、水深15mくらいまでは、スキンダイビングで撮影、あるいは研究調査をおこなえる可能性が大きくなり、日本水中科学協会のメンバーの中でも、スキンダイビングで撮影するプロのカメラマンがいる。

 スキンダイビングで、研究調査を行うメリットは、

 @自然にやさしい。A装備が軽くどこでも潜れる。Bランニングコストがかからない。C魚が逃げない。Dスクーバダイビングの前段階としてのトレーニングになる。などが数えられるが、スクーバと同等に危険であるから、スキンダイビングによる研究調査基準とマニュアルを策定する必要がある。

マニュアルの内容は、水深10mまでのライントレンセクトをシーカヤックなどの小舟を使って行う方法、レスキューチューブなどの浮体をつかって一定区域で散開して行う方法などを予定している。

 

☆スノーケリングによる研究調査

スノーケリングによる、水深2m程度までの磯採集、干潟調査 は、中高校生、大学生から専門の研究者に至るまで、広く行われている。安全確保のためのプログラム、マニュアルが必要である。

汀線波砕帯調査もスノーケリングで行われるが、身体的強さが要求され、危険でもあるので、プロダイバーの行うべき作業である。

 

3−4 プロフェッショナル・ダイビング

「ダイビングによって収入を得ることを目的とする。あるいは、生涯にわたってダイビングを生きる目標の一つにすることを言う。」

 

☆ ダイビングを業とする場合

@リサーチ・ダイバーAプロのカメラマン、Bインストラクター、ガイドダイバーC消防、警察などのSRTダイバー(Special Respones Team)

C作業ダイバー

港湾工事、サルベージなどの作業ダイバーは、原則として、日本水中科学協会の水中活動基準の範疇に入らないが、スクーバによるリサーチ・ダイビングを事業種目にする作業会社も多くなる傾向がある。信用できるリサーチをしてもらうためには、作業ダイバーにも、学術的な調査方法の研修とともに、自然にインパクトを与えない潜水方法の技能講習が必要である。

☆ プロフェッショナルダイビングの問題点

1.プロのリサーチ・ダイバーの資格がない。

2.プロのカメラマンはほとんどソロダイビングである。

 カメラを持てば完全な責任になるのか。ソロ・ダイビングが出来る状況と、知識・技能の確認が必要であろう。

 

4. 水中活動を三つの相、講習、トレーニング、活動、に分けた。

4−1 講習

 「未知である知識や技能を教えるために期間を限定して行う。技能・実技の講習は、指導者(アシスタントを含む)が直接管理して行う。」

4−1−1 「Cカードを持たない会員の講習は、担当するインストラクターが、各自所属する指導団体の方式で講習を行い当該団体のCカードを発行する。」

 

4−2 トレーニング

4−2−1 「Cカードを保持する訓練生は、習熟トレーニングと保護管理のもとでの活動経験を積み、知識・技能が確認されれば、技能確認証(Verification cardVカード)を受けることができ、日本水中科学協会の規定する分野の一般的な活動を自己責任で行うことが出来る活動ダイバー(Active Diver )となる。

4−2−2 「トレーニングは、細則に定める達成基準、維持基準、安全基準に従ってマニュアルを作成して行う。」

4−2−3 「達成基準:認定のために達成しなければならない基準」

時間が限られている講習では、達成できなければならない技術を習得することが困難であろう。立派なプログラムでも達成できなければ安全確保の役に立たない。技能確認プログラム(EX.プライマリープログラム)とは、達成すべきトレーニングのプログラムでもある。講習では、達成基準を確認するトレーニングを行い、訓練生は習熟のためにトレーニングを続け、保護管理の下での経験を積んで、技能確認証(Verification cardVカード)に到達する。

4−2−4 「維持基準:技能と身体能力を維持し、健康を保つ基準。」

ダイビングを行っている間は、ダイビングを休止していても必要な身体能力は維持していなければならない。そのためのトレーニングである。

また、生涯にわたって、健康を維持するためにもトレーニングは必須である。どのようなトレーニングをするべきかの基準である。

それぞれ、置かれた環境に対応したマニュアルを作って実施する。

4−2−5 「安全基準:危険なトレーニングを行わないための基準・@―C に該当するトレーニングは、行わない。

@     肺の圧外傷(空気塞栓症)の可能性のある垂直方向へのトレーニング、

A     スキンダイビングで息こらえのために起こる失神、

B     耐久能力とつけるための、ハードトレーニング

C     管理者の目が離れる可能性のあるトレーニング。

 訓練生(後に定義)のトレーニングは、自主管理、あるいは遠隔管理は認めら

れない。

 

 講習中、あるいはトレーニング中に事故など起こりえない態勢でおこなわなければならないのだが、それでも、講習中、トレーニング中の事故は、幾度か起こっている。

 

4−3 活動

4−3−1 バディシステム

 「二人のダイバーが緊密に連携して活動する、最も重要な約束(ルール)である。」

@       手順と動作を細かく決めて実行する。

A       バディチェックと水中での相対的な位置取りを決めて実施する。

B       役割分担を決めて実施する。フォロアーは、絶対的に追従する。

C       レスキュー時の行動を定めて置く。

 

事故例のおよそ70%は、バディが崩れて、一人になっている時に起こっている。

活動マニュアルは、あらゆる事態に対応してバディシステムを維持する方策(ノウハウ)を文書化したものであると言ってもまちがいではない。

 バディシステムの実施には、ソロ・ダイビングの研究が不可欠である。

 

4−3−2 ユニット

 「一つのバディに一人の監視、二つのバディに一人の監視を置く編成をユニットと呼ぶ。」

 

実際のダイビングでは、初心者(訓練生)の保護管理、水中作業など、3人、5人のチームが形成されることが多い。バディシステムは、インストラクターとかガイドダイバーが付き添わない、セルフ・ダイビングの場合がむしろ多く。ツアーダイビングなど、一般のレクリェーションダイビングでも、リサーチダイビングでも、3人、5人のチームで行動することが多い。チームと呼ぶよりは、ユニット(単位)とした方が、有機的なつながりが感じられるので、ユニットという言葉を採用した。

※6人、三つ以上のバディは、ユニットとして機能しない。また、監視の居ない4人、二つのバディは、二つのバディであり、ユニットではなりにくい。

 

 4−3−3 「インストラクターを含めて3人、あるいは5人のユニットで潜水する場合、もしも一人に不都合が起きた場合には、直ちにユニット全員で浮上し帰投する。ユニットを分けてはいけない。」

 

二人のダイバー、バディを一人のインストラクターが付き添ってトレーニングしていた場合、一人の具合が悪くなって、浮上しようとした。それに付き添ってインストラクターが浮上して、水面で安全確保した。置き去りにした一人を見にゆくと、事故が起こって亡くなってしまった。あるいは行方不明になった。古典的な事故のケースである。決して一人にして、置き去りにしてはいけない。一緒に浮上する。急浮上の問題もあるが、それでも一緒に浮上する。減圧症などは、後の治療で治る。

 

4−3−4  グループ

「10人以上のダイバーが連携してスクーバ活動を行う形をグループと呼ぶ。」

 

グループの例としては、スポーツダイビングでは、一般ダイビングクラブ、職場の同好会、学生のダイビングクラブ、サイエンス・ダイビングでは、研究室、プロフェッショナルダイビングでは、会社、などがある。

事故報告の形の一つにグループというタイトルが出てくるが、これは組織化されたグループを意味するものではなくて、ダイビングショップが直接にかかわらないダイバーたちを意味しているようだ。

 

4−3−5  ソロ・ダイビング 

 「水に入るエントリーから、水から出るエキジットまで、自分の意志で単独で行動するダイビングをソロ・ダイビングと呼ぶ。」

 ※ソロ・ダイビングを行ってよい資格、安全確保の手段について、別に研究し規定する。

 次回のシンポジウムの一つのテーマである。

 

5.管理体制

5−1 「水中活動という危険な活動を安全に行うためには、明確な管理体制が必要である。」

5−2 「管理を行う者は、基準の遵守と管理体制の維持について努力するが、水中での活動についての結果はすべて個々の責任である。」

      管理者とは、クラブの会長、大学クラブの顧問の先生、研究室の主催者などである。

    ※これまで、管理者とメンバーそれぞれが負うべき責任分担が明確でなかった。安全管理者、責任者と言えば、すべての責任が管理者にかかるというのが日本ダイビング社会の通念であった。管理責任と実施の責任、個人の責任を明確に分けなかったことが、事故を招いている。


 5−3 管理者

5−3−1 「管理者がコーチの資格を持っていない場合には、必ず別にコーチを置く。」

5−3−2「コーチ(セフティオフィサー)については別に資格基準を定める。」

 

5−4  直接管理と間接管理

5−4−1 「直接管理とは、管理者が被管理者と一緒に水中にあり、救助可能な状態であることをいう。目を離してはいけないし、もちろん一人にしてはいけない。」

5−4−2  「訓練生の潜水活動は直接管理が要求される。」

5−4−3 「間接管理とは、状況を見て適切な指示が出せる状態をいう。水面に居て監視しているような状況である。常に救助ができる体制を整えておく。」

 

5−8 遠隔管理 

「計画について、報告を受けて適否を判断し、許可を与える。」

 

6.知識・技能の確認

6−1 活動ダイバー(Active Diver

 「所定の研修を受けて、技能を確認されたダイバー、もしくは、下記A,B・・・のダイビング経験があり、検定を受けて、必要最小限度の技能があることを示し、自立してすべてのダイビング活動を自己責任で行えるダイバーを活動ダイバー(Active Diver )と呼ぶ。技能確認を証明する証として、技能確認証(Verification cardVカード)が発行される。」

 A : 各指導団体の上級以上の資格保持者

 B 10年以上のダイビング経験

 

6−2 訓練生(Trainee)

JAUSの会員(活動会員で可)であり、一般に認知されている指導団体のCカードを保持しているが、活動ダイバーの資格を得ていない初心者ダイバーを言い、保護管理が必要である。」

 

         Cカード講習中の初心者は講習生、Cカードを取得して訓練中の初心者を訓練生と呼ぶ。

      保護管理を行うコーチおよびリーダーは、直接管理を行い、訓練生から眼を離してはいけない。また、その時の透視度など周囲の海況に応じて、ただちに救助ができる間隔を維持する。 

 

ダイビング業界では、安全管理下の範囲について明確な基準が公表されていない。また、賠償責任保険の及ぶ範囲も明確ではない。

 


 

6−3  深度資格、レスキュー、リーダー資格などついては、別の確認基準によってVカードに付記される。

6−4 Vカードは、3年毎の更新であり、毎年30回以上のダイビング活動が証明される者は、簡単な技能検定で更新されるが、ダイビングを中止していた者は、新たに研修を受けなおす。

6−5 コーチ(セフティオフィサ−)「グループ、チームの知識・技能を維持、増進して、事故を未然に防ぐ役割を果たす。」

「インストラクターやガイドダイバーは、一過性の付き合いだが、コーチは、チームとの長い日常的な付き合いになる。」

 これまで、日本のスクーバダイビングには、このような役割が明確にはなかった。

       クラブの会長などが、インストラクターになることが通常だったが、元来、インストラクターはプロの資格であり、業界人である。

 

6−5−1 「コーチの資格条件は、現在、Vカード資格を有し、以下のいずれかの条件を満たす者

 @現役のインストラクターである。

    A10年以上のインストラクター経験がある。

       B10年以上のプロダイバー経験がある。

   C10年以上の研究者ダイバー経験がある。」

 

 

6−5−2 「コーチは、訓練生を指導して、知識・技能を確認して技能確認証(Verification cardVカード)を発行することができる。」

 

6−5−3 「コーチは、JAUSの会員であり、研究会に参加し、メーリングリストなどにより、情報を共有する。」

6−5−4 「ガイドダイバー(インストラクター)の役割は重要であり、一時的なコーチと考えて、チームを形成することができる。」

 

7.           海況・機材

7−1「海況の判断については、別の基準(海況判定基準)と細則を定める。」

7−2「ダイビング機材については、別の基準と細則を定める。」

8.健康管理

8−1「健康管理の不備、固有の疾患、その他原因不明の突然死については、すべて本人の責任である。」

 

陸上の市民マラソン大会などでは、ゴール後の突然死も珍しくはないが、大会開催者は、緊急の手当以外に責任を問われることはない。

命の尊厳は、第一に考えなければならないが、水中では、緊急時の救助が、二重遭難を引き起こす可能性もある。管理基準に照らし合わせて不届きがなければ、責任を問われることはない。

 

8−2「健康管理と健康状況の申告はすべて本人の責任であるが、健康管理についての忠告、別に定める書面による健康状況申告の機会をつくることは、管理者の責任である。」

 

マニュアルには、明確に健康状況申告の書式などの決まりを作り、メンバーには、申告書の提出を厳しく要求しなければならない。

 

8−3「死亡事故が起こった場合には、オートプシーイメージング(死後画像)などにより、出来る限り健康状況に関連する情報を収集する。」

 

原因不明の急死は、ダイビング事故に少なくはなく、どのような手段を用いても、その原因の解明は容易ではないが、できるだけの手段を講じなければならない。解剖などは、遺族の同意を得ることが容易では※、経費もかかるが、死後画像解析であれば、可能性が大きい。

9.       計画と記録

9−1「活動は、事故が起こった場合の処理を前提として計画し、計画は参加メンバー全員に、書類として渡し、かつ口頭で説明(フリーフィング)が行われなくてはならない。」

口頭での説明だけでは、伝達が確認できないし、書面のみでは読まれたかどうかわからない。簡略なものでも良いから、書面を渡し、説明を行う。

 

9−2 「ダイビング後の報告はマニュアルに規定する方法と順序(チェックリスト策定)で行い記録(ダイビングログおよびノート)に残す。」

 

 現在ダイビング界で広く行われているログ付けのログブックは、ノートであり、丁寧に書くためには、ノートブックの使用が便利であるが、ダイビング現場では、Cカードの信用がないために、ログブックの提示が求められる時がある。

 ノートとは別にエクセル等による本当のログを作成しておくべきである。伝送で送れるし、記録の集計に便利である。

 ※JAUSでは、エクセルのフォームを細則として、定める予定である。

 

10.危機管理

10―1 「緊急事態が発生した場合には、マニュアルに定める方法と順序に従って、正確に救急活動を行う。」

10−2 「事故が発生した場合、救助活動が終了した後、潜水が基準通りに行われていたか否かを調査し、既定の書式で協会に報告する。協会では、事故対策委員会を設置し、事実関係を調査し、規定が遵守されていたか否かを再度調査する。」

10−3 「事故の状況、調査結果については、会員に限定して報告する。訴訟が発生した場合には、事故対策委員会で対応し、その経過と結果については、報告書を作成して公表する。」

10−4 「事故についての訴訟は、その後、同様な事故を起こさないためにも、出来るだけ多くの会員が傍聴し、その結果を基準に反映させる。」

 

これまで、幾多のダイビング事故で、訴訟が起こっている。事故原因の納得が行く究明は、法廷での判決、もしくは示談、以外には得られないからであろう。

これまでに起こったいくつかの訴訟を念頭において、基準と細則を作成しているが、これまでに起こった訴訟の記録を全てみているわけではない。弁護士である松村教授に収集をお願いしているが、協会のメンバーに関連する訴訟は、傍聴して、その結果を基準に反映させる。

事故を起こした当事者が、技術的に未熟だった場合、すなわち技能確認証(Verification cardVカード)を取得していなかった場合、自己責任を主張することは難しい。

技能確認証(Verification cardVカード)の発行については、協会内でも、異論がある。しかし、事故発生時の責任を考えるとき、Verification card の発行は必須になる。

 

11.保険

11−1 「会員、および活動会員は、各自の家庭環境、従事するダイビングの難易度に合わせて、適切な死亡保険に加入する。」

?          死亡保険への加入が自己責任の印である。

11−2 「管理責任者は、トレーニング活動にそなえて、スポーツ安全保険に加入する。スポーツ安全保険は、活動の内容、条件によっては適用されないこともある。」

11−3 「所属する研究機関、学校などが規定する普通傷害保険に加入する。」

   活動の充実に応じて、会員が守られる適切な保険の設定を検討し努力する。

        活動の充実に応じて、会員が守られる適切な保険の設定を検討し努力する。

 訴訟の発生を考えたとき、一般の普通傷害保険で解決できるように、訴訟を維持するための保険が必要になる。現在、保険に関連しているメンバーに調査をおねがいして居る。

 

 

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